#メイコさんにデートに誘われたルカさんの話。
#タイトルでだいたい察してください。
melt
デートしようか。
唐突に言われた。
丸一日予定がなくて、と言うよりメイコさんと休みが重なることを期待して空けておいたのだけれど、予定が合わなければ部屋の片付けでもしようかと思っていた。
いざ休日になって朝食後にコーヒーを飲みながら、ルカ、今日の予定は? と訪ねてくるような人だ。大抵は二人でのんびり過ごしたり、少し手の込んだご飯を作ったりするのだけれど。
デートしようか。
時折やって来るこの不意討ちのようなイベントは、決まって私をクローゼットの前で思案させる。
お気に入りのレースのカーディガンは、先週メイコさんと出掛けたときに着たばかりだ。マリンカラーのブラウスは、メイコさんが似たような色合いのワンピースを持っている。この間のセールで買ったシフォンのロングスカートは、早々にメイコさんに貸して、この人はいっそモデルになった方がいいのではないかと思った。
つまり私は、メイコさんとのデートに来ていく服を決めかねて、クローゼットの前であれやこれやと悩んでいるわけだ。
そう言えばどこへ行くのかを聞いていなかった。難易度がぐっと上がる。
こういう時、メイコさんは私を急かしたりしない。
たぶんメイコさんはこうやって私が悩んでいることが楽しいのだ。嬉しいのかもしれない。そうだといいな。
そうこうしているとドアをノックする音がして、もうすっかり出掛ける準備の整ったメイコさんが顔を覗かせた。
クローゼットの前で立ち往生している私を後ろからふわりと抱き締めて、私の肩に顎を乗せる。
「迷ってる?」
「…迷ってます」
「デートだから?」
「…デートだからです」
「ふふ」
満足そうに笑ったメイコさんは、かわいいと囁いて私から離れた。
背中が熱い。それと、耳も。
たった一言でこんなに私をどきどきさせるのはこの人だけだ。悔しいなあ。
「メイコさんが選んでください」
「うん、いいよ」
私のささやかな抵抗も、にこにこと嬉しそうに受け止めてしまうのだから敵わない。
今日のところは観念して、メイコさんが選んでくれた花柄のフレアワンピースを着て出かけることにする。