貴方の色

#メイコさんのことばかり考えているルカさんと、そんなルカさんをお見通しなメイコさんの話。
#もうだいぶ円熟した後期のルカメイです。
 

 
貴方の色
 
 午後の仕事が思いのほか早く終わって、次の予定まで少し時間が空いた。
 駅までの近道だと言われて通った公園はちょうど紅葉が見頃で、鮮やかな赤や黄色が陽射しを透かして、秋の終わりを惜しむように揺れている。
 綺麗だな、と思いながら歩いていて、不意に足を止めた。
 ひときわ赤い紅葉の葉。
 夕日に照らされたその色は、どういうわけかメイコさんを思い出させた。
 髪の色が似ているわけではない。
 瞳の色でもない。
 けれど昔から、赤はメイコさんの色だ。
 真紅の薔薇も、真夏のハイビスカスも、冬のポインセチアも、四季を彩る赤はすべて私にメイコさんを思わせる。
 不思議な話だ。
 風が吹いて、枝から離れた紅葉が一枚、くるくると回りながら足元へ落ちてきた。
 その様子を見ていたら、何だか急にメイコさんに会いたくなってしまった。
 一緒に暮らしているのだから、帰れば会えるし、今朝だって顔を合わせている。
 それなのに会いたいなんて、我ながら重症だと思う。
 あの人にはそういう魅力があるのだ、きっと。
 私はスマートフォンを取り出して、メッセージを開いた。
 何を書こうか少し迷う。
 会いたい、は子供っぽい。
 仕事終わりました、も業務連絡すぎる。
『駅前の公園の紅葉が綺麗でした』
 考えた末にそう送った。
『写真は?』
 すぐに返信が来て思わず笑ってしまった。
 この人は私が考えているよりずっと、私のことを気にかけてくれている。
 私がどこで、何を見て、どんな風に思ったのか、それを歌にするのが好きなのだ。
 紅葉がいちばん綺麗に見える角度を探して写真に収める。それをメイコさんに送った。
『ほんとだ。綺麗』
 純粋な感想の後にもう一通。
『赤くて私みたい?』
 そのメッセージを見て私は思わずどきりとした。
 どうして分かるのだろう。
 いや、メイコさんだから、という理由で十分かもしれない。
 私はメイコさんが大好きだけれど、それと同じかそれ以上に、メイコさんも私を大好きなのだ。私の考えていることなんてお見通しだ。
 紅葉の舞う公園のベンチに腰掛けて、私は小さく笑いながら返事をした。
『そういうところです』
 少しして投げキッスのスタンプが返ってきて、やっぱり敵わないと思った。
 しばらくベンチで紅葉を眺めて、今日はメイコさんの好きなお酒を買って帰ることにした。