下書きからサルベージした東京魔人學園剣風帖の第6話のインターバルの会話。
AIにそれっぽい絵も描かせてみた。
いずれ付き合う龍麻と亜里沙なので苦手な方は注意。
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桜ヶ丘中央病院を出て亜里沙は駅に向かう。
真神の面子とは帰り道が逆方向だったのに、龍麻だけは送ると言ってついてきた。
当たり障りない会話をしながら繁華街を並んで歩く。
夜風が制服の裾を揺らす。
しばらく会話が途切れて、亜里沙は隣を歩く龍麻を横目で見た。
「別によかったのに」
「何が」
「送ってくれなくても」
龍麻は肩をすくめる。
「こんな時間に制服の女子が一人で歩いてたら危ないだろ」
「そんなの慣れてるわよ」
亜里沙は笑った。残念ながら品行方正な女子高生ではないのだ。夜の繁華街で声をかけられることなんて珍しくない。
「だから嫌なんだよ」
龍麻は前を向いたまま言った。亜里沙に無遠慮な視線を送ってくる男たちを睨みつけて牽制しながら。
「駅まで送る」
亜里沙は少し目を丸くする。
「へえ」
なかなか、自分の周囲にはいなかったタイプの男だ。
「案外ちゃんとしてんのね」
「当たり前だろ」
「だってあんたのことまだよく知らないし」
この妙に腕っぷしが強くて義理堅い男のことを、もう少し知りたいと思った。先ほどまではお腹が空いたとか明日の学校が面倒だとか、取るに足らない会話をしていたけれど。
「ねえ」
「ん?」
「あんたってどういうタイプの女の子が好みなの?」
少し突っ込んだ質問をしてみた。
龍麻は一瞬だけ亜里沙を見て、何か思いついたように口元を緩めた。
「そうだな」
わざと考える素振りを見せる。
「小柄で大人しい子かな」
亜里沙の眉がぴくりと動いた。
「ふーん」
適当な相槌を打ちながらショーウィンドウに目を向ける。
映っている自分はまるで正反対だ。背は高いし目つきはきつい。おまけに大人しいとは程遠い性格だという自覚もある。
「じゃあ、あたしみたいのは、あんたの眼中にないってことか」
思ったより不満そうな声が出てしまった。
そういう期待をしていたわけではないけれど、まったく好みじゃないと言われると少し悔しい。まだ明るい子とでも言ってくれたほうがよかった。
亜里沙が少し拗ねた様子を見せると龍麻が笑った。
「なんだよその顔」
「なによ」
「拗ねるなよ」
「拗ねてないわよ」
亜里沙は即答するが、からかわれたのだと気づいてそれ以上言い返すのをやめた。
不思議と不快ではなかった。こんな風に軽口を叩き合える男子は、考えてみたら身近にはいない。妙に居心地がいい。
「嘘だよ」
唐突に龍麻が言った。
「背が高くて大人っぽい子」
言いながら、亜里沙の肩を軽く引き寄せた。すれ違う酔っ払いにぶつからないよう庇ってくれたのだと分かったけれど、思わずどきりとしてしまった。
「なによそれ。どっちよ」
顔が熱くなるのをごまかすように、突っかかるように言う。
「あと気が強い」
意外にも真面目な顔で、龍麻がそう付け加えた。
「ふうん」
歩きながら亜里沙は考える。軽口を言いはするが、最初に思ったとおり案外誠実な男なのだろう。
「それならあたしにも可能性はあるってことよね」
亜里沙は前を向いたまま、独り言のように言った。
「じゃあ付き合うか?」
すかさず龍麻が拾って返すので亜里沙は吹き出した。
「それはちょっと」
「なんでだよ」
「今日会ったばかりの男と付き合うほど安くないのよ」
龍麻も笑う。
「じゃあ友達からだな」
「そうして頂戴」
駅はもう目の前だった。
律儀なことに龍麻は改札まで亜里沙を送り、彼女の姿が見えなくなるまでそこにいた。
「悪くないわね」
そんなことを思いながら、亜里沙は帰りの電車に乗り込んだ。
